定例懇話会 「がんは怖くない」

定例懇話会(2014年12月5日) 
「がんは怖くない」
 

大阪府立成人病センター 松浦成昭総長

 がんはかつて不治の病と言われてきたが、今は6割の患者が治る時代となった。不治の病というイメージは払拭されつつあるが、4割が亡くなっているわけだから、深刻な病であることに変わりはない。2012年にがんで死亡した人は約36万人で死因の1位である。がんで死亡する確率は男性が26%、女性が16%。がんに罹患する確率は男性が60%、女性が45%となっているが、高齢化にともないさらに増えることは間違いない。

外科手術は世界一
 がんが見つかった場合、治療法はどうするかだが、そのがんが「原発巣だけにとどまっているか」「リンパ節に転移しているか」「体のあちこちに転移しているか」―――全身を調べてがんの進行度(ステージ)を診断して治療法を決める。外科手術ががん治療の中心であるが、日本の外科手術は世界一と言ってもいい水準まで到達している。今後はQOL(生活の質)の維持、向上を重視し、腹腔鏡手術や乳がんにおける乳房温存手術のような縮小手術の方向へ大きく舵を切って行くだろう。

放射線治療の充実が急務
 外科手術に比べ、放射線治療の遅れが目立っている。これは悪性リンパ腫、食道がん、前立腺がんなど放射線感受性の強いがんに有効で、正常部を避ける高精度照射(IMRT)の開発によって有効性がさらに増大している。手術ではないので、患者の身体的負担も小さい。しかし、日本では放射線治療が欧米に比べてかなり少ない。人材や施設が十分でないことに起因するもので、放射性治療医は米国の十分の一しかおらず、放射線治療に関与する医療スタッフである医学物理士に至ってはさらに少ないというのが現状である。施設に関しては2017年3月の完成をめざし、大阪府庁の南隣に新しい成人病センターを計画しているが、放射線治療を充実させるため、150億円を投じて重粒子線治療施設を整備することにしており、その完成を心待ちにしているところだ。


人材不足の改善を
 私の親友が末期がんの痛みに苦しんでいたが、阪大病院は緩和ケアへの対応が遅れていて、やむなく淀川キリスト教病院に入院した。幸いなことに、ここの看護師さんは極めて親切で、緩和ケアもよく、安らかな最期を迎えることができた、ということがあった。このような緩和ケアの充実、放射線治療の充実のためには、何といっても人材不足の現状を改善することが急務であり、2007年から「がんプロフェッショナル養成プラン」という国の事業が実施されてきている。チーム医療の体制を充実させるため、がんに関する幅広い知識や高度な技術を有する多くの専門医や医療スタッフの育成に努めているところだ。


大阪はがん死亡率が高い
 大阪はがん死亡率が全国で最も高い地域の一つになっている。これは大阪のがん医療が遅れているわけではない。むしろ最も進んでいる地域と言っても過言ではない。問題はがん検診受診率が低いことで、全国のワーストワンということに起因している。

 がんは予防できないのか、という質問をよく受ける。ワクチンのような薬による予防ができればよいのだが、これはなかなか難しい。現状においては、バランスのとれた食事、運動、十分な睡眠、適量の飲酒、禁煙など生活習慣の改善で対処するしかない。さらに、がんの2次予防として住民健診、人間ドックなどによってがんを早期に発見し、早期治療を実施することが大事なことで、そうすれば治療成績が大きく向上するのは最近の実績が明確に示している。 
                                (TVO 中川民雄)

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