徒然なるままに ~ ミチコとダニーロ 戦火を越えて

昨年の私の関心事は大阪万博と大相撲で、たまたまその二つで共通の感動を味わう事が出来ました。
まずは4月に万博に行ったのは「京都の日」で、ウクライナの国立バレエ団と京都の日本舞踊との共演が素晴らしかった。聞けば寺田バレエ・アートスクールの校長、高尾美智子さんが半世紀前からウクライナとバレエで親交を結んでおり、京都のダンサーも大勢留学しているとのこと。今は息子さんが後を継いでこの日の公演に漕ぎ付けたそうです。元々彼の地のバレエは伝統的に盛んで、歴史ある古都の踊りは丁度京都の日舞と重なります。残念ながら文化交流の架け橋となった美智子さんは昨年11月に病気で86才の生涯を閉じました。それを知ったのは先週、NHK・BSのスペシャル番組でした。
彼女はチェルノブイリで原発事故が起こった時も予定通りその近くのバレエ教室に向かい、ウクライナがロシアの侵攻で戦争状態になっても寺田スクールは留まって踊り続けました。

大阪万博のバレイ

昨年のウクライナと関西の縁を思わせるもう一つの切っ掛けに大相撲があります。昨年角界を沸かせたのは二十歳そこそこで大関になり連続優勝した安青錦(あおにしき)関で私も毎場所手に汗握って応援しました。
ウクライナ・ヴィンニチャ生れで本名ダニーロ・ヤブグシシン。7歳から相撲を始め、6年前大阪で開かれた世界ジュニア選手権で3位になったのを、当時関西大学相撲部の主将が気に入り、青い目の青年はそこで猛練習してやがて地元の安治川部屋の研修生に。その後はあれよあれよと出世街道を驀進して、近々綱とりも間違いなし、と云われるまでになりました。実はウクライナはレスリング大国でもあり五輪のメダリストも輩出しているお国柄。遠く離れていてもニッポンとの親和性がありました。この恐るべき逸材は、好きな歌が河島英五の「時代おくれ」、好きな言葉が「ありがとうございます」と泣かせます。
彼は4年前に母国が戦場になると平和な極東の島国へ移って、人を殺す代わりに相手を土俵から押し出す闘いに身を投じました。いつかグランドチャンピオンとして平和な故郷に凱旋する日を心待ちしていることでしょう。
片や戦火のウクライナに乗り込んだバレリーナ、こなた平和なニッポンに渡った格闘家。一見真逆ではあるものの、二人には夢と平和を求めて奮闘する人間の姿が見られます。
BS番組のラスト、ミチコは京都で「この空はウクライナまで続いている」と呟きました。地図帳を開いた私は、ウクライナの大地を流れるドニエプル川が黒海に注ぎ、やがて地中海から大西洋へ。一方、京都から大阪に下る淀川は紀伊水道で太平洋に流れ込み、ウクライナと関西は海でも繋がっていることに気付きました。戦火を越えたミチコとダニーロの物語に思いを馳せながら、この小さな地球から戦争がなくなり、人々が夢を叶える日がくることを切に願った冬でした。
鈴木 優(KTV)

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