8月1日(金)午後2時から大阪駅前第2ビル6階の大阪市立生涯学習センター第2研修室で、第39回「定例懇話会」が開催されました。今回は「落語(上方芸能)を楽しむ会」とのコラボ企画で、「上方落語の現在と未来」と題した特別寄席です。進行は「天満天神繁昌亭」初代支配人、恩田雅和氏(関西民放クラブ理事)。総合司会の元ABCアナウンサー・西野義和氏の軽快で巧みな話術で会場は盛り上がり、あっという間の2時間半でした。
まず、恩田氏個人の落語との関わりや、繁昌亭についてのお話を伺いました。恩田氏が落語に携わるようになったいきさつは、大学2年の時に病気で休学、その時に聞いたラジオで落語の魅力にはまり、退院後は新宿末廣亭に通うようになったそうです。和歌山放送時代の1991年に始めたラジオ番組「紀の国寄席」は、2004年まで続く長寿番組となりました。天満天神繁昌亭ができたのは2006年、上方落語協会会長・六代桂文枝師匠の上方落語の定席を復活させたいという強い思いと熱意からでした。文枝師匠たっての依頼で2007年に恩田氏は初代支配人に就任、2021年の退任後も繁昌亭編成アドバイザーとして、また上方落語協会理事として、上方落語の発展・振興に寄与されています。
続いてお待ちかねの特別寄席です。若手のホープ・笑福亭笑有さん、恩田さんが今最も期待しているという笑福亭智丸さんが、それぞれ渾身の一席を披露しました。
まずは笑福亭笑有さんの「金明竹」、骨董屋を舞台に、あまり頭のよくない小僧が来客にトンチンカンな対応をしてしまい、主人が右往左往させられる滑稽な古典落語で、会場は爆笑に包まれます。
続いては、笑福亭智丸さんが「鹿政談」を披露しました。鹿を神獣と崇める奈良で、犬と間違えて鹿を死なせてしまった豆腐屋を、奉行がそのクソ真面目さに振りまわされながらなんとか裁きをくだす、という古典落語の名作です。智丸さんは昨年の繁昌亭大賞・新人賞受賞の実力を遺憾なく発揮してくれました。
最後は恩田雅和さんと笑福亭智丸さんによるトークセッション、「上方落語の現在と未来」について語って頂きました。
上方落語の入門者数が激減、2024年は、たった一人だったそうですが、智丸さんは、入門者数は年によって違い、波があるので悲観していない、師匠には付き人がそれぞれ何人かおり、その人たちがいずれ協会所属の噺家になり活躍してくれるでしょうとのことでした。
上方落語と江戸落語の違いについても聞きました。大阪以外で大阪弁が受け入れられなかったので、上方落語の人気の広がりは地域限定的でしたが、テレビメディアのお陰で地方でも大阪弁が通用するようになり、智丸さんは更に全国に向けて発信し、上方落語の人気を広げていきたいと思っているそうです。繁昌亭という定席小屋ができ、一門の垣根がなくなり交流が深まっています。そして東京とも東西交流が深まり、それが刺激になってお互いの良いところを伸ばせるいい機会になっているということです。
智丸さんが危機感を持っているのは、寄席の三味線引きを担う人が少なくなってきていること。出囃子だけでなく、上方落語では話の途中で効果音的に三味線その他の鳴り物が使われます。三味線引きの確保や養成は喫緊の課題といいます。
今、桂二葉さんが女性噺家としてテレビの露出も多くなり、人気を博しています。現在上方落語協会に所属している女性噺家は20数人で、全体の約1割、最近の傾向として男女の垣根がなくなりつつあり、その数は多くなってきているそうです。智丸さんは、これからも人気女性噺家が出てくるのを期待しているとのことです。
盛り沢山の内容となった今回の懇話会、「上方落語」のよもやま話を堪能された参加者の皆さんは、満足された笑みを浮かべて会場を後にされました。 川崎宏(ABC)