徒然なるままに ~ カンボジアの至宝・アンコールワット

カンボジアの遺跡、アンコールワットを語る研究者のインタビュー連載が先日終わりました。お読みになった方も多いと思います。日本人が研究に、石材建築の修復に関わってきた事は大変誇らしい思いで毎日読んでいました。

1992年10月ポルポトとの内戦で疲弊したカンボジアの復興を支援しようと、国連の平和維持活動・PKOがスタートしました。日本からも自衛隊がカンボジア南部の村タケオに駐屯地を設営、活動を始めました。フジニュースネットワーク(FNN)でも取材チームを派遣する事になり、東京本社、マニラ、バンコクのフジテレビ支局そして、我が関西テレビ、シンガポール支局にも声がかかりました。当時はまだカンボジア北部を中心にポルポトの残党が活動していて生命の危険がある事から“参加の意思確認”があったのです。勿論「参加」と答えて10月10日から19日まで第一次カンボジア取材、首都プノンペンのホテル・カンボジアーナ臨時支局とタケオの民家を拠点に2泊3日の輪番勤務が始まりまったのです。

この後、8回にわたってカンボジアに行く事になるのですが、翌93年2月から3月にかけて約一か月、臨時支局長としてプノンペンに滞在しました。仕事は、当時国連の代表だった明石康さんにインタビュー、国連のレクチャー、ポルポトとの戦闘を収録した政府軍兵士の映像素材の価値判断、など様々でした。我々は戦闘地域に入る事を止められていたので政府軍が戦場から持ち帰る映像素材が頼りだったのです。どんなシーンかで価値判断をし、素材を買い取って日本に向けてのリポートに使います。

そんな一か月が終わり、フジテレビのカメラマンやビデオエンジニアと“お疲れ様・日帰り旅行”で初めてアンコールワットを訪れましt。ロシア製のプロペラ機でトンレサップ湖を超えてシェムリアップへ。静かな田舎町なのですが意外や意外、小さなフランス料理店があるのです。味も先ず先ず、お腹を満たしたところで遺跡見物に出たところ、村人が先のとがった金槌を買わないかとついてきます。「?ナニ、コレ」とジェスチャーすると、どうやら「遺跡の石を削り取って土産に持って帰れ」と言っているようなのです。いずれどこか先進国の人間が知恵をつけたのでしょうが、勿論買う訳にいきません。

壮大にそびえるアンコールワット、修復もされず静かに佇むアンコールトム。まだそれほど観光客が居るわけでもありません。地元の人たちが花を持ち寄ったり、拝んだりする素朴な寺院のようでした。嵐のようにカンボジアを覆い、通り過ぎて行った“宗教”の力、そしてジャングルに覆い隠されて眠っていた月日、様々な事を思わせる「東南アジアの至宝」です。

その後の取材でアンコールワットを訪れた時、ある部屋で現地ガイドに言われるままに、壁際に立って胸を軽く叩いてみた所、何とも不思議な「ボワーン」という音が、何処からともなく聞こえてきました。今にも、時代を超えて昔のクメール人が壁の向こうから現れそうな貴重な体験でした。

今ではカンボジアツアーも当たり前になりましたが、1990年代初頭、手つかずの頃のアンコールワットは私たちに、栄華の時代を静かに語りかけてくれるようでした。                関西テレビ 出野徹之

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