4月活動報告 クラシック同好会

昼間のコンサートをレギュラーに聴いてきたクラシック同好会ですが、新シーズンの幕開け、久しぶりに夜の例会を企画しました。春の宵、秋山和慶指揮、ベートーヴェンの「運命」は如何かと日本センチュリー響、4月定期公演に席を予約しました。残念ながら秋山氏は1月に急逝され、愛弟子の下野竜也が代理を務める事になりました。センチュリーとの共演は20年ぶりと言いますから私の在団中、「新世界」をもって松山で演奏会を行いました。あれ以来という事か、と当時を思い出しました。

開演は7時ですが、定時になっても楽団員が中々ステージに現れません。客席にちょっとした緊張感が漂う中、場内の照明が薄暗く落とされ、楽団員と一緒にマエストロ下野登場、抑え気味の場内アナウンスとともにモーツァルト「デイベルティメントK130」より第二楽章が静々と演奏されました。

楽団員のみならず事務局職員からも尊敬され、敬愛された秋山氏に心を込めての追悼演奏でした。

本プロは実に歯切れの良い演奏でした。プーランクのバレエ組曲「牝鹿」は軽快に、メロディアスに、聞き手を“遊びの世界”に連れて行ってくれるようでした。

デュティユー作曲、チェロ協奏曲「遥かなる遠い国へ」を演奏したのは気鋭の笹沼樹、長身を黒の衣装でまとい、長髪を後ろでまとめて登場、それだけで彼の世界へと誘われます。何の変哲もない普通の世界から笹沼自身が即興で音楽を紡ぎ出すような不思議な演奏です。正に「遠い世界」へ連れていってもらいました。

演奏が終わると静寂の底から「ブラヴォー」が湧きだしました。

この夜の演奏の“切れの良さ”は、何処から来るのだろう?と感じていた所、インターミッションで旧知の音楽評論家とバッタリ、早速疑問をぶつけてみるといとも簡単に「下野さんですよ」と。私も7年間オーケストラと起居を共にしました。演奏はコンサート当日、いきなり作られる訳ではなく3日間の練習(定期公演)で練り上げられます。彼らは服部緑地の練習場で「キレ」を磨いたのでしょうね。“下野の運命”は正に圧巻でした。終演後クラシック会員と、お馴染み「運命」の冒頭、”ダダダダーン”という箇所のスピードが指揮者によって違う、という話で盛り上がりましたが、恐らく下野は秋山和慶を体現したのではないでしょうか。オーソドックスですが個性的、普通に終始しているけれど忘れがたい、そんな「運命」を聴いたような気がします。

世話人 出野(KTV)

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