北野さん講演会

北野栄三さん、95歳!今もかくしゃくとして若々しくかっこよく頭脳明晰の現役ジャーナリストです。 5月17日(土)、西宮市100周年記念事業として笹部さくらゼミナール特別編。

「私の見た笹部さん」の講演が、西宮の白鹿記念酒造博物館で行われました。講師は関西民放クラブの大先輩・北野栄三さん(MBS出身・元関西民放クラブ会長)です。ゲストとして西宮市副市長岩崎敏雄氏、博物化を運営している辰馬健二会長も参加された。

桜博士・笹部新太郎氏(1887~1978年)は、東京帝国大学で学ばれた後、サラリーマン生活などを嫌って桜の研究への道を選び、生涯を通じて桜の研究・保護につくされました。西宮と縁が深く、膨大な桜コレクションが西宮市に寄贈され、白鹿記念酒造博物館に展示されています。笹部氏の業績を語るのに、岐阜県御母衣ダムの底に沈む運命にあった樹齢500年の2本の「荘川さくら」を、見事湖上に移植され、その偉業は今も語り継がれています。当時毎日新聞の記者であった北野氏は、笹部番として一貫して笹部氏の取材に当たられました。笹部氏の信頼も厚く、笹部さくらの大事業にも同行取材、生き生きとした取材記事を残しておられます。

今回の講演でも、北野さんしか知らない笹部氏の人となり、桜への思いを伺うことができ、聴衆の感動を呼びました。笹部氏は日本の国花のようにもてはやされているソメイヨシノは、桜にあらず、昔から日本人が大和ごころになぞらえて愛してきた山桜・里桜こそ本来の桜で、あのように改良された品のない造化のような桜を喜んでいては、日本人は品性そのものまで低下すると主張されていた。小林秀雄さんが笹部氏に会って「上方にしか生まれない人物だ」と評し、「桜守」を書いた水上勉さんも「たしかに笹部さんのような人物は、大阪の風土の産物だ」ともいっている。そこから会場では縦社会の東京に比べ大阪は人情厚い横社会であろう、また品性こそ、人格の善悪の基準ではないか、桜は幹まで版木として使われ、浮世絵はじめ古書の保存に使われているなど、幅広い桜の話題が弾んだ。

我々民放クラブの有志は、昨年春、北野氏とともに高山郊外に今もずっしりとその佇まいを見せている「笹川さくら」を訪ねた思い出もよみがえり、ひとしお感動的な今回の講演であった。

上村十三子(MBS)

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