今年最後の例会は日本センチュリー交響楽団、豊中名曲シリーズ、ちょっと寂しく6人での鑑賞でした。会場はほぼ満員。阪急宝塚線「曽根」駅に近い豊中市立文化芸術センター大ホールで年間4回開催される、このコンサートは地元だけでなくクラシック音楽ファンの間にすっかり定着してきたようです。
2曲目に登場したピアニスト務川慧悟には“追っかけ?”のファンが居るようで演奏が終わるや否や20人ほどの若い女性がスタンディングオベーションで称えていました。このホールでのスタンディングオベーションは珍しく、市外からのお客さんと見受けました。
ラヴェルのピアノ協奏曲を演奏したのですが3楽章とも、とても個性的で特に第2楽章は“ただただ美しい音楽が溢れだす(プログラムノート)”モノローグ、務川のさりげない、淡々とした演奏が余計に印象に残ります。衣装は燕尾風の襟のついた黒のスーツ、何処にでも居そうなひょろっと華奢な若者で、さりげなく登場して凄い演奏をして、盛大な拍手とスタンディングオベーションに照れたように退場して行きました。有名な「ロン=ティボー」、「エリザベート妃」国際コンクールで、2位、3位の期待のピアニストです。
プログラム後半はシューマンの交響曲第3番、指揮は川瀬賢太郎。以前、NHKのクラシック番組でよく見ていたので、どんな指揮をするのかと興味を持っていました。39才、身のこなしも軽快で指揮台に立つや否や棒が振り下ろされます。聴く方も“間髪を容れず”、曲に入ります。シューマンがこの曲を作曲したのは川瀬とほぼ同じ40才、デユッセルドルフでの新生活が始まり、充実した時代だったようです(プログラムノート)。
交響曲というと4楽章の間にドラマチックに揺さぶられるようなイメージですが、この曲は“優しい交響曲”とでも言うのでしょうか、大きな盛り上がりは無いのですが、その分何とも言えない厚みがあり、そこここに印象的なメロディーが現れます。「良いメロディーを見つけた時は、“やった”という気がして繰り返し使いたくなるんだ」と言った作曲家の言葉を思い出します。5楽章で構成されたこの曲、暖かく、生き生きと、ずっしりしたお歳暮をもらった気分のコンサートでした。
世話人 出野徹之(KYV)