俳優の火野正平さんが先月亡くなりました。BSの「日本縦断・こころ旅」を時々見ていました。特に旅先の海岸などで視聴者からの手紙を読むシーンは、火野さんの人柄が見えるようで好きでした。一度だけお見かけした事があるのですが、とても印象的な思い出です。
2020年、大阪、「なんばパークス」の映画館で「Fukushima50」という映画のプレミアに招待されました。舞台挨拶には佐藤浩一、火野正平という出演者が招かれ上映前に大きなスクリーンを挟んで下手の女性司会者と上手、出演者の質疑応答がありました。火野さんは司会者の質問に答える度に「こちらからは以上です」と区切って場内の笑いを誘いました。私も最初は笑っていたのですが、度重なるにつれて、“待てよ、彼はテレビのリポーター、アナウンサーをまねて、というよりちょっとからかって、わざと言っているのではないか”、と思えてきました。同時に中々、鋭い言語感覚の持ち主ではないか?と半ば感心して質疑応答を見ていました。
現役諸君、何の抵抗もなく「こちらからは以上です」ってやっていませんか?
よく考えてみると変ですよね。「以上、何なんだよ」と突っ込まれると返答に困ります。報道ステーションで女性アナウンサーが次の項目に進むとき「続いてです」というのも訳が解りませんが、その類です。
「以上、誰誰が何処どこからお送りしました」となると「以上」に込められた意味が見えてくるのですが、火野さんに一本取られた気がしました。他山の石としましょう。
出野徹之(KTV)