第202回例会報告「秋の山崎に、昭和の名建築 聴竹居を訪ねる」
大阪から京都へ向かう列車の車窓、サントリー山崎工場を過ぎると、天王山。その山麓にひっそりと佇む名邸「聴竹居」を訪ねる例会を10月23日(水)、20人が参加して行いました。
週に二日の一般公開、一日4回、各10人までとの厳しい見学規則に従って、10人ずつ2班に分かれて行動するという、異例の形式での例会実施となりました。
第1班は、JR山崎駅に午前10時50分集合。11時15分から90分、聴竹居を見学し、午後1時すぎから遅い昼食をJR駅近くに戻っていただき、第2班は、11時30分、駅集合。すぐに昼食をとり、午後1時からの見学。この2班は、零時45分すぎ、JR踏切上ですれ違い、あわただしくご挨拶。
聴竹居は、竹中工務店勤務を経て京都帝大建築学科教授となった藤井厚二氏(1888~1938)が、環境共生を目指す住宅として、1万2000坪の広大な敷地に実験住宅の建設を繰り返し、5回目の自宅として1928(昭和3)年完成。癌で亡くなるまで住み続け、現在は竹中工務店が維持管理しています。
JR山崎駅から踏切をわたり、坂道をゆっくり歩んで約10分。和洋折衷の建物の中で、広い居室の天井は2.7メートルの高さ。鴨居も高く、ゆったり感たっぷり。天井のデザインは網代の採用など部屋ごとに異なり、自らデザインした照明器具は円や幾何学模様、様々だが、優しい明りを灯す。
南に面する広い縁側からの景色は絶品。当時としては珍しいゆがみのない窓ガラスは欧州からの輸入品で、正面の男山や、宇治川など3川合流の鮮やかな光をまっすぐに届けてくれる。居室から食事室の間には曲木で、半月上部のような空間を作った。ここが一番苦労したという。
別棟の閑室は藤井氏が個人で使った棟で、学生などの接待に使われたのではないかという。松と竹の網代天井や床の間の舟形天井など見どころが多い。
ガイドさんの丁寧な説明もあって、「へー」「すごい!」「おしゃれー」と一部屋ごとに感嘆の声があがり、「映像に収めると見事な1時間番組が作れる」との声もありました。和と洋のデザインが織りなす空間から小さな部品に至るまで、美と機能性を兼ねそろえた工夫満載の邸宅に、びっくり連続の見学でした。(室内写真はネット配信禁止ですので、紹介できず残念です)
昼食会場の三笑亭は、油の神を祀る離宮八幡宮に隣接する天ぷら専門店。創業150年の座敷で美味しい料理を楽しみ、解散後は大山崎山荘美術館で開催中の米国人画家「アンドリュー・ワイエス」の展覧会を訪れる方もいて、心配した雨にも降られず、充実した一日を楽しみました。
次回、第203回例会は、11月27日(水)、京都西山の光明寺、長岡天満宮で紅葉を愛でる予定です。多くの方の参加をお待ちしています。 (文責 田仲、井出)