飛鳥時代の文化の香りを楽しもうと、26日午前10時にJR法隆寺駅に集ったのは16人。駅前から乗り合いバスに乗り込み、法隆寺参道で降りる。木立の間を粛々と南大門に向かった。待っていたガイドさんに伴って門に入ると、広くて白い砂利道が左右の土塀に囲まれている。「広く見せるために、道を前広がりにしている」と聞き、今に通じる巧みな演出効果を感じた。
仏舎利の入るという堂々とした五重の塔と金堂の凛々しい姿に、多くの人がカメラを向ける。中門の金剛力士像は裏側から覗きこんで足に浮き上がった血管などを確かめ、太い柱に触って古代建築を身体で感じる。正岡子規の「柿食えば」のは句碑を眺めた後は、まるで国宝、重要文化財のパノラマだ。
釈迦三尊像、薬師如来像、四天王像などの仏像。スマートな百済観音を見上げる人々はしばし、動きを止める。端正な夢違い観音、幼児を含めた複数の聖徳太子像、玉虫厨子。著名な宝物に圧倒され、残暑のせいあって、休憩ベンチではややぐったりする人も。
秋のシーズンとあって、周囲では遠足の子供たちの行列が行きかう。外国人の姿も目立つ。
八角形の優美な夢殿を一回りして、7世紀に創建された聖徳太子ゆかりの寺院をたっぷり堪能した。
法隆寺には数々の伝説が残る。梅原猛の「隠された十字架」に描かれた聖徳太子(厩戸皇子)にまつわる悲劇の鎮魂場所との説を披露する声も聞かれた。小学校以来、初めての人、何度も足を運んでいる人。世界遺産に登録され、奈良を代表する寺院は、それぞれの思い出をよみがえらせる格好の舞台のようだ。
隣接する中宮寺は金堂の本尊、国宝菩薩半跏像(伝如意輪観音)がお目当て。半跏の姿勢で右手の指先を頬に触れ、人の悩みをいかにせんかと思惟しているというが、淡麗で優しい微笑みに魅せられた人が多かった。
昼食は古い土塀に囲まれた「カフェ布穀薗」で、地元素材中心の竜田揚げランチ。大き目の唐揚げをほおばり、三輪そうめんをすする。グラスのハートランドビールは好評で、二杯目を頼む人も。
帰りは中宮寺近くのバス停から、帰る予定でしたが、入り組んだ道に迷って、皆さんに法隆寺駅まで歩いてもらいました。汗をかかせてごめんなさい。
文責 井出 敬