「私の思い出の一曲」 かもめの水兵さん

 毎度、古い話で恐縮です。私は岡山県児島市(現倉敷市)の片田舎で育ちました。疎開っ子でしたが何せ0才での事、地元の子供たちと似たようなものです。周辺には同じような境遇の子、大陸から引き揚げて来た子など様々でした。

 小学6年生の時、NHKラジオの「声くらべ、腕くらべ子供音楽会」が田舎町にやって来ました。録音は、その地域では“街場”に当たる味野小学校、我が赤崎小学校からも選手を出す事になり、私が選ばれました。当時、結構人気のあった番組で、それに出演できるなんてちょっと「鼻髙」ものです。4才にして笠置シヅ子の「アイレ可愛や」を歌っていた私は結構歌が上手かったらしく、当日は、母が、糊を効かせ、アイロンをしっかり当ててパリパリになった一張羅のシャツを着てコンクールに臨みました。そこで歌ったのが「かもめの水兵さん」。未だ声変わりしていないキンキン声で歌ったのでしょうね。当時とても好きな歌だったので迷うことなく選んだと思います。今でも前奏から歌えます。

 昭和12年に河村順子の歌唱によって発表され大ヒットした、とウィキペディアにはあります。更に面白いのは河村によって海外に紹介され、ヒンディー語、ドイツ語、韓国語など11か国語に訳されたとあり、それぞれの国の子供たちが歌ったのだろうと楽しいシーンが浮かんできます。

 「子供音楽会」で鐘が鳴ったかどうか全く覚えていないのですが、それから数十年後、地元の高校の同窓会で在校時、憎からず思っていた女子から「出野君、昔、“声比べ腕比べ”に出とったでしょう?」と地元の言葉で聞かれました。彼女とは別の小学校だったのでちょっと驚きましたが、「実は私も出とったんよ。あの時の記念写真見てもらったら、真ん中の列の、、、が私」と。よくもまぁ覚えてくれていたと、暫し昔話に花が咲きました。

 最近では「童謡」というジャンルがすっかり消えてしまい、子どもたちが童謡・唱歌を歌うシーンも見なくなりました。日本独特(だと思います)のこの音楽文化を、せめて「自分だけは覚えておきたい」と時々「童謡唱歌大全集」を取り出しては歌っています。

♪   かもめの水兵さん ならんだ水兵さん
   白い帽子 白いシャツ 白い服
   波にチャップチャップ うかんでる

♪   かもめの水兵さん かけあし水兵さん
   白い帽子 白いシャツ 白い服
   波をチャップチャップ 越えてゆく

出野徹之(KTV)

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