絶滅危惧業界用語

「もっとばえるのないの?」「ディスるからなあ」「ググッてみるわ」「俺もエゴサるよ」…これはさる若者たちの最近の会話。私は全く意味が解りませんでした。言葉が時と共に変わってゆくのは世の常で、放送業界を皮切りに舞台業界に移り、その間個人的に映画界に関わってきた私は、これら日本のエンタメ業界から所謂「専門用語」が消え去るのを見てきました。「言葉が消える」と云うのは「仕事・技がなくなる」事かも知れません。そんなギョーカイの「絶滅危惧専門用語」を拾ってみました。あなたは幾つご存知ですか?

【うるさい】画面上、余計なものが映り込みごちゃこちゃしている状態。 【書き割り】建物や風景を描いた大道具パネル。 【強電パッチ】調光卓と調光盤を繋ぐパッチ方法。100Vの電圧が加わった電線を直接つなぎ変える。感電しながら操作したという噂も。【3.5型フロッピーディスク】調光卓のデータの保存に使用する。未だ現役で頑張っているが、生産が終了し入手困難。 【しずる感】空気感や物のリアルが表現された素晴らしい映像。美味しそうで食べたくなるような。 【セッシュウする】映画の撮影で背の低い俳優の足元に台を入れる事。ハリウッドの早川雪舟の逸話から。 【出会い帳場】特定作業場で同じ職種の複数の業者が同時に作業する事。最近は使う先輩方も絶滅した。 【デンスケ】ソニーの取材用可搬型テープレコーダ。漫画のデンスケが街頭録音に使ったからだとか。「デンスケ担いで万博取材」から既に半世紀。 【盗む】撮影に都合の良いように物や人物を不自然に見えない範囲で本来の位置からずらす事。 【ぷにょする】いらないものをどける事。「笑う」と同義。語源は中国語の「不要」(ブーニャオ)で、終戦後「満映」から引き上げて来た京都の映画人が使用した。 【八百屋】奥が高く前が低い傾斜がついた舞台。本家「八百屋さん」が絶滅危惧職。  【弁当箱】昔の2インチVTRテープ。文字通りのデカさで重く番組販売に苦労した。  【よいよい】機材運搬のトラックの積み荷をロープで固定する結び方。「よいよい」との掛け声がその由来。

最近は公共放送でも「いまいちでした」「全然大丈夫です」とのたまうご時世。上記の言葉が消え去っていくのは淋しいものですね。
鈴木優(KTV)

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