24年も恒例「初春文楽公演」鑑賞で幕開け!

落語(上方芸能)を楽しむ会
24年も恒例「初春文楽公演」鑑賞で幕開け!

 恒例となっている「落語(上方芸能)を楽しむ会」の「初春文楽公演」観劇、今年も1月16日(火)に23名の会員が国立文楽劇場に集合して、14時30分開演の第2部「伽羅先代萩」竹の間の段、御殿の段、政岡忠義の段、床下の段を鑑賞した。

 ロビーには正月恒例の「にらみ鯛」、緞帳上にも鯛と大凧「辰」(京都・壬生寺貫主揮毫)が飾られ、劇場全体が正月らしい華やかな雰囲気。また、甚大な被害をもたらした能登半島地震の災害義援金募集も、文楽人形が加わってロビーで行われ、多くの方が被災地支援の寄付を投じていた。

 今回鑑賞した「伽羅先代萩」は、江戸時代の仙台・伊達家で起きた「伊達騒動」を題材とした人気演目で、お家の乗っ取りをたくらむ悪人たちと、幼君を守る乳母や忠臣たちとの息詰まる争いを描いている。まだ幼い藩の跡継ぎ・鶴喜代を守り支える乳母・政岡の忠義、政岡の幼い息子でお家騒動の犠牲となる千松の健気さと政岡の母性愛、最後の床下の段での忠臣・松ヶ枝節之助と大鼠の大立ち回りなど、波乱万丈見所たっぷりで、休憩をはさんで2時間余りの舞台があっという間であった。亡き我が子・千松に母の心情を一気にぶつける政岡のクドキの場面や、最後の節之助と大鼠の立ち回りなど、この演目には歌舞伎的な演出が多く見受けられるが、それもそのはず、この「伽羅先代萩」は先に歌舞伎として作られ、その数年後に人形浄瑠璃が作られて、歌舞伎と人郷浄瑠璃が相互に影響を与え合いそれぞれ人気を博した作品である。

 政岡の人形を遣うのは人間国宝の吉田和生、大名の若君に仕える乳母の品性と千松に寄せる母性愛を見事に演じきっていた。今回会員にあてがわれた座席は、客席上手の太夫・三味線のすぐ近くであり、「竹の間の段」の豊竹芳穂太夫、「御殿の段」の竹本千歳太夫、「政岡忠義の段」の豊竹呂勢太夫、「床下の段」の若手・豊竹亘太夫まで個性をいかした熱演が続き、特に盛り上がった場面では、登場人物になり切った各太夫の語り、表情、仕草とその演技力にあらためて見惚れてしまった。また、「政岡忠義の段」の三味線は人間国宝・鶴澤清治で、間近に聞き見るその妙技にはさすがと思わせる貫禄があった。

 コロナ禍も落ち着きつつある中で、文楽劇場の客足もだいぶ戻ってきたようだ。「落語(上方芸能)を楽しむ会」では1年に1回の鑑賞だが、それ以外の公演にもできれば足を運び、この関西が世界に誇る古典芸術を今年も大いに応援していきたいと思っている。

髙井久雄(関西テレビ)

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