徒然なるままに 高砂高校ジャズバンド部
関西テレビ 出野徹之
「ムーンライト・セレナード」「A列車で行こう」、高齢者はタイトルを聴いただけでメロディが浮かんできます。最近ではついぞこういう音楽を聴かなくなりましたが、今どきの高校生が、部活でスウィングジャズを日常演奏していると言ったら驚かれるでしょうか。
兵庫県の西部、県立高砂高校に「ジャズバンド部」があって生徒たちは歴代、スウィングジャズの演奏を楽しんでいるのです。毎年神戸で開催される「ジャパン・スチューデントジャズフェスティバル」で毎年のようにグランプリを獲得、最近では2021年から3連覇していて、ジャズ界のレジェンド、クラリネット奏者の北村英治さんから「ビッグ・フレンドリー・ジャズオーケストラ」と命名され演奏を称えられています。
私が初めて彼らの演奏を耳にしたのは去年のこと。NHK神戸局は夕方のニュース枠で「ジャズライブ神戸」のコーナーを持っています。ある日、大勢の高校生が懐かしいビッグバンドの演奏をしているシーンに出会いました。「何だ、これは?」と夕食もそこそこに見入ってしまいました。私は8年ほど前から「井植文化賞・文化芸術部門」の選考委員を務めていて“兵庫県内で活動する”音楽関係者”を推薦する役を仰せつかっているのです。
番組の司会は旧知の今城アナウンサー、学校紹介を聞いて「これは是非推薦しなければ」、と連絡先を教えて頂きました。
更に調べると、あの大ヒット映画「スウィングガールズ」のモデルになったバンドだと解りました。上野樹里、貫地谷しほり達が演じる東北の落ちこぼれ高校生が「ジャズやるべ!」とビッグバンドを作る物語、憶えている方も多いでしょう。
早速、学校にお邪魔して指導者、生徒に会いました。我々の年代は「懐かしい」曲なのですが、16,17才の高校生がどこに魅力を見出したのか、が一番の不思議でした。聞いてみると「全く知らない音楽を“一(いち)から始める楽しさ”がある」「吹奏楽と違って仲間と一緒に“自由に演奏する楽しさ”がある」とのこと。なるほど、彼らにとってスウィングジャズは“全く新しい音楽ジャンル”だったのだ、と解りました。
今年の選考会議では他の二人の委員と検討した結果、高砂高校ジャズバンド部を今年の「文化芸術部門賞」に推薦、10月に垂水の井植記念館で表彰式がありました。
彼らの演奏はユーチューブで聴く事ができますので一度検索してみてください。また山陽電車「高砂」駅では電車が近づくと「シング・シング・シング」、発車の時には「A列車で行こう」、いずれも高砂高校ジャズバンドの音楽で知らせています。秋の夜長、お手持ちのCD、いやレコードなど引っ張り出してみては如何?