~仲秋の名月を仰いで~

~仲秋の名月を仰いで~
鈴木 優 (KTV)

  「おじいちゃん、あれがメイゲツなの?」
 4才になったばかりの孫が指さすのは古いプラネタリウムの偽の天球でした。今夜は仲秋の名月なので近所の天体施設も特集を組み私たちを呼び込んだのです。最近はロケットの打ち上げに失敗したり、火星の石を分析したり、何かと宇宙の話題が多いので、大昔の天体少年としては嬉しい限りです。

 若い人と話しているとき太陽系の惑星の並び順でその人の年が分かります。私たち昭和30年代生れは「水金地火木土天海冥(スイキンチカモクドッテンカイメイ)」と習いました。子供たちにそれを云うと「ちゃうで」と突っ込みが。調べてみると一番外側の冥王星の軌道が楕円形なので時に海王星の内側を廻り順番が逆になるらしい。1979年から1999年までは「ドッテン・メイカイ」と海王星が一番最後でした。この間に中学生だったうちの子供たちは学校でそのように教わったとか。

 では21世紀生まれの孫はまた「カイメイ」に戻ったかというとさにあらず。2006年に冥王星は惑星の資格をはく奪されて準惑星に堕落したために、現在では「ドッテンカイ」で終わっているそうです。それがどうした、という話ですが昭和のロマンチストは落ちぶれた冥王星に思いを馳せてしまいます。

 家路をたどると夜空にぽっかり本物の仲秋の名月が。それを見上げていて、突然私に30年前の記憶が蘇りました。長男坊が生まれた1986年は76年振りに「ハレー彗星」が地球に接近した年で、私は生まれたばかりの赤ん坊を抱き上げ、「しっかり見ておけよ。人生で2回見られるのはお前だけなんだからな」と云い聞かせたものでした。当人は何も分からず泣きじゃくるばかりでしたが。今やそいつが二児のパパか。

 さて、今夜の月はこれからも毎年眺められますが、次にハレー君がやってくる40年後に私は勿論いません。子供と孫と冥王星がその時どこで何をしているのか、少し楽しみな仲秋の宵でした。


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