徒然なるままに ~10円ニュース~
関西テレビ 出野徹之
他の人にはどうでも良いようなことが、自分の中では何んとか調べたい、知りたいことってありませんか?長~い間、気になっていたことを、先日ようやく発見ました。昔、東京、渋谷にあった「10円ニュース」です。
私は学生時代、大学のあった西武池袋線沿線に住んでいました。次兄夫婦が、東横線の「三軒茶屋」に住んでいたので、時々泊りがけで家庭の食事をよばれに行っていました。
池袋で山手線に乗り換え、渋谷で「玉電(東急電鉄玉川線)」に乗るのですが、兄夫婦は共働きなので、帰宅まで時間潰しに、この「10円ニュース」を観ていたのです。昭和38,9年頃、10円で入場すると世界のニュースと映画の予告編を“何時間でも”観ていられるのです。当時の10円、今では100円の感覚でしょうか、竹脇昌作が抑揚を抑えた低い良い声で「ムーヴィートーン・ニュース」などをしゃべるのです。私は関西に住んで何十年も経ちますが、この間、東京生まれの後輩や若い頃、東京で仕事をしていた先輩に「10円ニュース」の事を聞いてみても、これまで一人として知っている人にお目にかかれません。何かの記憶違いだったのかなぁ、と殆ど諦めていました。
文芸春秋八月特大号は「代表的日本人100人」という特集でした。白洲次郎、茨木のり子など興味深い人物が語られているので購入、その中に放送作家の高田文夫氏が、こんなことを書いていたのです。ちょっと長いですが引用します。
「子供時代、文化的な恩恵は映画館が教えてくれたの。渋谷にあった東急文化会館の地下(現在のシブヤヒカリエ)でやってた“十円(本文のまま)映画”を浴びるように観てたね。元NHKアナウンサーの竹脇昌作、俳優の竹脇無我のお父さんね、これが「今週のパラマウント・ニュース」なんて、鼻にかかった名調子で読むニュー―ス映画。ダーっと、各社のも含めて一時間くらい流れて、次に洋画の予告編が一気に上映される仕組みなんだよ。それを見せとけば子供も喜ぶし、半日つぶれるから、親は積極的に小遣いを渡して“行っといで!”って送り出してくれた」。
時代が書かれていないのですが、間違いなく「10円ニュース」だと直感しました。私は「10円ニュース」と記憶していましたが、高田さんが観ていたと同じ内容なので、「10円映画」とも呼ばれていたのでしょう。
高田文夫氏の子供の頃の想い出で、ようやく「10円ニュース」映画館が本当に存在していたのだと“証明”されて、長い間の疑問が氷解しました。
そう言えば、映画館で予告編とともに上映されていた「ニュース映画」が消えたのは何時の事でしょう?新たな疑問が湧いてきました。