「落語(上方芸能)を楽しむ会」で、10年ぶりの「浪曲」鑑賞!

 

「落語(上方芸能)を楽しむ会」で、10年ぶりの「浪曲」鑑賞!

 

 「浪曲(浪花節)」とは、日本大百科全書(ニッポニカ)によると、「江戸末期に関西方面で大道芸として体をなし始め、明治期に寄席芸となって大いに発展・普及し、講談、落語と並ぶ大衆演芸として庶民に広く愛好された。」とある。まさに、上方のみならず日本を代表する芸能の一つ、ということができるだろう。ところが、この「落語(上方芸能)を楽しむ会」では、平成24年(2012年)11月10日に一心寺・南会所で催された「芸術祭参加 浪曲若手四人組(菊地まどか、春野恵子他)」を鑑賞したのみで、実に10年以上もこの「浪曲」を取り上げてこなかった。

 そんな中で、1月17日に「初春文楽公演」鑑賞のため国立文楽劇場を訪れた際に、「浪曲名人会」(2月25日開催)のチラシを目にした。今の浪曲界を代表する浪曲師が揃う豪華な顔ぶれで、この文楽劇場では1年に1日のみの開催だという。しかも、文楽鑑賞の翌18日がチケット予約開始日という素晴らしいタイミングである。早速その場でこの「浪曲名人会」を鑑賞することに決め、劇場の営業担当・北口氏に席を押さえてもらった。

 この「浪曲名人会」、7人の浪曲師が順に登場し、休憩をはさんで3時間40分という長丁場である。文楽鑑賞から約1カ月後と短い間隔でもあり、果たしてどれだけの会員が参加されるか心配だったが、最終的に16名もの多くの方々から参加の申し込みをいただいた。

 当日の会場は浪曲ファンでほぼ満員。まずは上方浪曲界若手のホープ、京山幸乃と京山幸太のリレー浪曲で、「雷電と八角」(寛政力士伝より)から幕をあけた。大阪で開催される大相撲春場所を目前に控える中で時宜を得た演目であり、開幕にふさわしい勢いのある熱演である。続いては、昨年6月に鑑賞した繁昌亭公演にも出演していた人気者・春野恵子が、「大阪といえば近松」と近松門左衛門の名作「おさん茂兵衛」を艶っぽく演じる。そして、大ベテラン松浦四郎若が、豊臣方の武将・木村長門守重成と茶坊主・良寛の諍いを描いた「木村長門守堪忍袋」を堅実な技量で演じきったところで、仲入りとなった。

 後半は、真山一郎の歌謡浪曲「あゝヒロシマ」で幕を開ける。彼は曲師の三味線ではなくオーケストラ演奏の録音を伴奏とし、原爆の後遺症で白血病となり命を落とす少年とその父の悲しい物語を痛切に演じて観客の涙を誘う。続いて女流のベテラン・天中軒雲月が登場、大河ドラマ「どうする家康」が話題となる中、これも時宜を得た「徳川家康 人質から成長の巻」を演じ喝采を浴びる。大トリは、昨年度の芸術選奨・大衆芸能部門で文部科学大臣賞を受賞した、浪曲界の第一人者・京山幸枝若である。演じるのは、名匠・左甚五郎が五寸四方の小さな板に千人の僧侶の姿を彫ろうとして苦闘する様を描いた「千人坊主」である。笑いもふんだんに盛り込み、さすがの話芸で満員の観客を幸枝若ワールドに引きずり込んで、3時間40分の長丁場が幕を閉じた。開幕前は、浪曲ばかりで3時間40分はキツイかな、と若干危惧していたが、浪曲界のトップスターたちの技量の確かさと演目の多様さが相まって舞台に引き込まれ続け、浪曲の魅力とその真髄を存分に堪能することができた。

 最近、「落語(上方芸能)を楽しむ会」例会の終了後は、会員同士の親睦を図るために食事会を催している。この日は、大相撲春場所を控えていることもあり、劇場近くのちゃんこ料理店「西乃龍」でちゃんこ鍋をつつく会を設定した。この会に参加したのは12名、皆で飲んで食べて大いに盛り上がったことをあわせて報告しておきたい。

 「落語(上方芸能)を楽しむ会」世話人 髙井久雄(KTV)


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