「南蛮文化館と中之島美術館を鑑賞」
散策同好会は十一月十日(木)に「南蛮文化館」と出来立ての「大阪中之島美術館」の鑑賞会を実施した。阪急の中津駅に午前十時に集合した参加者は十五名。中津は梅田の隣駅だが、「ここで降りるのは初めて」という人も。
「これはすごい」「大きくて綺麗」声が挙がった。重要文化財の「南蛮屛風」を見上げた時だ。南蛮船が現れた港の活況が金の屏風に描かれている。横幅3・6m。「お茶のもてなしを受けています」と矢野孝子理事長が茶の湯をたしなむ黒衣のバテレンを指さす。南蛮との文化交流の珍しい場面。父親の北村芳郎氏が文化財はまとめて保存すべきだと、個人で収集した美術品の数々を丁寧に解説してくれた。
南蛮文化館にはキリスト教関係の絵画や陶磁器、螺鈿の工芸品から地図や鉄砲、砲弾まで南蛮ゆかりの品が整然と並ぶ。信長時代に栄えた南蛮文化。それは秀吉の禁教で陰に隠れる。
福井の医科の土塀で竹筒の中に潜んだ「悲しみのマリア画像」は折り目でついた格子状の筋が時代の厳しさを偲ばせる。島原の原城址で発掘された黄金の十字架は、まばゆいばかりの輝きに多くの人が見入っていた。
南蛮文化館は私設美術館で、気候の良い五月と十一月しか公開せず、宣伝もしない希少な施設。皆さん、ゆったりとした様子で、観賞していた。
同館からタクシー四台に分乗して、大阪中之島美術館へ。前の広場のキャットの像を背に記念写真を撮影。館内のレストラン「ミュゼカラト」で、肉と野菜の特注ワンプレートランチを楽しんだ。
黒くて四角い美術館は、長~いエスカレータで鑑賞者を会場に運ぶ。「天井に向かっていく感じ」と興奮の面持ちの人も。
この日の特別展は四階の「ロートレックとミュシャ」。貴族に生まれながら、身体の障害を持ち、美と快楽を求めたロートレック。苦学の末に援助を受けて時代の寵児になったミュシャ。同じ時代にパリで過ごした二人は華やかな舞台や商業文化が花開く中で、芸術的なポスターなど洗練された作品を次々と生み出した。
ロートレックの女性は表情豊かで躍動的なタッチで描かれたものが目立つ。一方、ミュシャは静的で花飾りの美しい女性を丁寧な筆で描く。衣装や装飾品、背景の雰囲気も全く別だ。
「僕はロートレック」、「私はミュシャ」とメンバーの好みも分かれるところが、今回の展覧会の面白さ。川沿いの帰り道の会話も弾んでいた。
晴天に恵まれて、芸術の秋を楽しめた一日となった。
(TVh 井出 敬)