もう無駄にする時間はない!
人は過去の連鎖の中で生きている。過ぎ去りし楽しかったこと、行き交った人々、経験した悲喜こもごも、そして明日からの未来に生きる。夢や、目標を掲げて・・・
だが、コロナが来襲したこの1年数か月は、何だったのか?自分の経歴として加えたくもないし、まして未来も見えない。ただ頭上を通り過ぎていく日々を目つむって耐えているだけの唾棄すべき日々だ。そりゃ、この間にも新しい見るべき発展もあった。IT関連ではより新しい技術を誕生させ、デジタル化の進展や、リモートによる家庭内オフィスの誕生、そのため家族との絆が深まり、男性もスーパーに出かけ、料理もするようになった。自分を見つめなおす時間も出来た。より進歩した未来に向かって知力を蓄え、明るい将来へ飛び立つべく、研鑽の日々でもあろう。
だが、その間に人々の、庶民の生活はどうだ?職を失い、病に倒れ、生き抜く気力を失って自死する人もいる。
幸い年金生活の我々は収入を失うこともなく、頭上の暗雲が、通り過ぎていくのを身をすくめてひたすら耐えている。だが、目に見えない喪失感!戦前、戦中、戦後の苦難を乗り越え、ようやく残された人生を楽しく過そうとした矢先だった。我々はどんな悪事を働いたというのだ?失われたコロナ禍の年月は1年数か月であっても、我にとっては10年にも相当する貴重な年月である。一日も早く友と会い、杯を酌み交わし、歩けるうちに旅にも出かけたい。我々にはもう無駄にする時間はないのだから。
上村十三子(MBS)