関西民放クラブの理事、辻一郎さんが、4冊目になる自著「メディアの青春」~懐かしい人々~を上梓された。
梅棹忠雄主宰の同人誌「千里眼」に投稿されていた中から、加筆し再編された回顧交友録である。第一章が「懐かしい人々」とし、高峰秀子や永六輔、永井路子、刎頸の友・高田宏氏らの思い出話、第二章は「ある時代」と題し、母上の淡い恋物語、学生時代の友人や恩師のこと、第三章が「職場の思い出」とし、毎日放送で黎明期の放送人として活躍された頃に知己を得た同僚や先輩の話など、真に感動的なエピソードがつづられている。一遍一遍読みごたえがあり、ページを繰るのが楽しい。
辻さんとは、生きた時代が重なることもあり、共感やなつかしさが共有される部分もあるが、京都大学時代の学友との交歓や、素晴らしいご両親の慈しみなど、わが身と比べると、誠に知的で、垂涎もの上質な半生を送られている。こうしたご経験が、人々の尊敬を買い、鷹揚で、温和な人柄を作り出されたのだ。
失礼ながら時には「イチローチャン!」なんて、お呼びすることもあり、怒り顔など見たこともなく、みんなのアイドルでもある。
一人でも多くの方にこの本をお読みいただき、辻一郎さんの魅力をさらに味わっていただきたい。
大阪公立大学共同出版会発行、1,900円(税別)。アマゾンでも購入できる。
上村十三子(MBS)