散策同好会は11月5日、第159回例会「宇治の古刹を巡る~黄檗山萬福寺、平等院など~」を、41名が参加して行いました。爽やかな快晴のなか、京阪電鉄宇治線・黄檗駅から午前中は黄檗山宝蔵院、同萬福寺を見学、昼食後は電車で宇治に向かい、平等院と宇治上神社を訪問、夕刻までガイドさんの案内付きでしっかり歩き、秋の1日を楽しみました。
黄檗山宝蔵院では、境内奥の3階建コンクリート造の収蔵庫いっぱいに、6万枚もの一切経版木が収納棚に整理して積み重ねられており、「本邦近代印刷発祥の地」とか。仏教典籍の集大成である一切経の開版を志した鉄眼禅師が、隠元禅師から黄檗山敷地の提供を受け、吉野桜の材料を使って10年余りかけて製作したもの。田中智誠・黄檗文化研究所副所長によると、欧州でのグーテンベルグによる活版印刷術が聖書の普及を進めたように、この版木で初版から現在まで約2000部余りが印刷され、近世での仏教興隆におおいに貢献し、また使用された明朝体がその後の新聞印刷などにも採用されたという。
黄檗宗の大本山、萬福寺は「山門を出れば日本ぞ茶摘み唄」(菊舎尼)の石碑に記されているように、広い境内での伽藍配置、仏像、儀式作法など、すべて開創者、隠元禅師の故郷、中国方式が今に受継がれている。説明役の廣瀬尊之・宗務本院主事は、玄関にあたる天王殿から本堂の大雄宝殿など、伽藍内の主要施設を巡って詳しく説明。創建当時の姿そのまま引き継いでいる寺院は他に例がないという。廣瀬さんの説明もユーモアに富み、皆をなごませた。田中副所長と親交のある散策会員の江本東一さん(ABC)のご尽力の結果、このお二人の僧侶による黄檗山案内が実現したことを記しておきます。
秋季特別展「黄檗の文華」を文華殿で鑑賞したあと、境内の食事所で「普茶弁当」をいただきましたが、お酒類の入らない昼食は、散策同好会ではきわめて珍しいこと。そのあと再び、黄檗駅に戻り、京阪電車で宇治に向かいました。
宇治駅では民間ボランティアガイド3人と合流、3班に分かれて、平等院へ。昨年修理改装なった鳳凰堂は、当日朝早く事前予約をしていたので、スムーズに全員一緒に内部を見学することができました。その後、宝物類を展示した鳳翔館の見学を経て、宇治上神社に向かう途中、宇治川のほとりで今年何度もテレビに登場した女性鵜匠と出会い、デビューしたばかりの人工授精鵜ウティーも交えて話が弾むなど、午後4時に宇治駅で解散するまで、大いに楽しんだ秋の散策同好会の一日でした。
(田仲 和彦)