第24回定例懇話会 「京大の名物教授が語る!生涯現役のための面白健康学」


2015年6月5日
関西民放クラブ第24回定例懇話会

 

「京大の名物教授が語る!生涯現役のための面白健康学」
森谷敏夫 京都大学大学院教授

 

 人体の仕組みですが、人間の体は60兆個の細胞でできていて、血液から酸素やエネルギーの供給を受けて生命を維持しています。その血液を回しているのが心臓で、20歳頃をピークに毎年1%ずつ衰えるのですが、筋肉は鍛えれば強くなり、それは筋肉でできている心臓でも同じことがいえます。

1に運動、2に運動

 心臓は運動して鍛えないとどんどん機能が低下します。米国のNASAが、屈強な20歳の軍人を3週間寝たきりの状態にしておいたらどうなるかを調べたのですが、たった3週間で心臓の機能が30%も低下したのです。30歳も年を取ったということを意味します。人間は適用力に優れていて、この場合は心臓ですが、使わない機能は退化するようにできているのです。

 これも米国での調査ですが、歩くスピードを見るだけで、余命と健康度がわかるという結果が出ています。とぼとぼ歩いている人の死期は早く、スタスタ歩く人は長生きするというのです。歩くにはエネルギーが必要ですし、早く歩くには心肺機能が強くないといけないのです。歩幅にも注意して下さい。歩幅と認知症リスクの相関関係がはっきり出ています。歩幅が狭い人は、認知症が発症しやすいのです。女性に認知症が多いのすが、女性は歩く姿で将来が予測できるとも言われる所以です。

 日常生活では運動することを心がけて下さい。エスカレーターは使わず、階段を上がるなどの努力を意図的に行うことです。三浦雄一郎さんは重りを足に着けて歩いているとか、故森光子さんは毎日150回もスクワットをするとか、鍛えていますね。筋肉の衰えや柔軟性の低下を加齢のせいにしてはいけません。

現代は肥満薄命

 皆さんに宿題を出しておきます。正しいスクワットの仕方です。椅子を使って浅く腰掛け、手を前に出し、前傾して立ち上がります。椅子を外し、膝を90度以上曲げずに同じように立ち上がります。初日は1回で十分です。2日目は2回、3日目は3回と徐々に増やしていけば、1か月で30回はだれでもできるようになります。年をとっても人間はそういう運動に耐えるようにできているのです。2か月後には60回ですが、これで十分です。心臓が強くなり、階段も軽く上れるようになるでしょう。

 お腹のたるみは心のたるみです。美人薄命は昔のこと、現代は肥満薄命です。メタボ検診は意外に軽視されていますが、お腹が出るのは、お腹の細胞に脂肪がたまり、それが細胞に炎症を起こし、がん、動脈硬化、高血圧、高脂血症などの疾患につながるのです。

 がんは遺伝ではありません。がんになる原因物質の多くは口から入ります。がんの原因の1位は食べ物で35%、たばこが2位で30%ですから、いろんなものをまんべんなく食べ、煙草をのまなければ、がんの65%は予防できる可能性があるといえるでしょう。

 肉やラーメンなど脂肪分多いものを沢山食べれば、脂肪の好きな腸内の悪玉菌を増やし、発がん物質が大量に出てきます。便秘も発がん物質の温床です。では何を食べればよいかですが、ヨーグルト、糠漬け、キムチなど発酵食品や、野菜がよいですね。とにかくいろんなものを、バランスよく食べましょう。

糖尿病は肥満から

 肥満が引き金になって起こる病気の代表が糖尿病ですが、これは万病の素です、九州大学の調査ではがん死が3.1倍、アルツハイマー病が4.6倍になるという結果が出ています。

 粗食で、毎日動き回っていた昔の人に糖尿病はなかった。糖尿病は全身の血管をむしばみ、脳・心臓血管系の病気のみならず、自律神経障害、腎臓病、網膜症などの合併症を引き起こします。血管ボロボロ病と言った方がよいかもしれません。

 ここで一句――「脂肪貯るな、カネ貯めよ。無駄に動いて、無駄肉無くそう!」

 なぜ、歴代の米国大統領は各種スポーツを愛好し、走るのか。山中伸弥教授も走っていますね。世界で最も忙しい部類に入る人が走っているのです。運動は身も心も頭も活性化させるのです。年を取ったからできないとか、時間がないという言い訳は通用しません。ウォーキングでも十分です。スクワットもいいですね。ここらで一念発起、運動を始めてみてはいかがでしょうか。「生涯現役、死ぬまで元気に生きる」ためにはそれなりの努力が必要です。

(TVO 中川民雄)

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