「高齢者の住まい ~いざという時、困らないために~」
講師 西岡理恵子 (シニアの暮らしアドバイザー)
日本人の平均寿命は女性が86歳、男性が79歳です。では、他人の助けを借りずに、自立して生活できる健康寿命はいくつかというと、女性は73.6歳、男性は70歳と言われています。その健康寿命に達するまでにどういうところで、どう生きて行くか、ということを考えておくことが大事です。ずっと自宅で生活するのか、元気なうちに住み替えるのか、それとも介護が必要になってから住み替えるのかで、高齢者の住まいは変わってきます。
住み替えのタイミング
住み替えのタイミングですが、「今の住居形態」や「家族状況」などによって住み替えるべき時期は個々に異なりますし、住まいに必要な条件も変わってきます。心身ともに元気なら、自立して生活できますが、住宅をバリアフリー化する必要があるでしょう。まだ元気だが、一人暮らしだと不安が大きい、ということであれば、緊急コール体制が欲しいですね。足腰が弱って来たが、手助けがあれば自立できる、というレベルになると、「要支援1~2」で、思い荷物を運ぶとか、病院通いをサポートしてもらう見守り生活支援を得られます。この段階までなら不安はあるものの、一人で生活できます。さらに状況が変化し、訪問ヘルパーや家族の介護で自宅生活が何とか可能という「要介護1~2」になると高齢者だけの暮らしは難しくなり、家族の負担は大きくなります。それ以上の重度の介護が必要な「要介護3~5」になれば、夜間の介護など手厚い介護体制が必要になり、介護保険だけでは賄えなくなります。
高齢者住宅の供給状況
高齢者住宅の供給状況はどうなっているのでしょうか。2012年4月現在では総居室数は1,579,800室で、介護福祉施設は全体の57.8%。うち30.3%が特養と言われる介護福祉施設で、同21.7%が老健と言われる老人福祉施設です。特養は費用は安いのですが、1室で4~6人が生活するもので、プライバシーはなく、入居待ちが300人とか400人とかで入居が難しいのが現状です。老健はリハビリ目的の施設で、3~5カ月したら出なければならず、終の棲家にはなりません。ということで、公的な施設にはいろいろ問題があることから、いろいろな種類の有料老人ホームできています。シルバー分譲マンション、サービス付き高齢者向け住宅、医療機関が運営する介護入居型の有料老人ホーム、ケアハウスなどが様々なニーズに対応しています。
住み替えの考え方
住み替えの考え方ですが、大きく分けて4つあります。1つは「ずっと自宅で」というもので、これを望んでいる人が多く、国も推奨しています。自立型ですが、最終的には家族の介護が不可欠となります。2つめは「介護が必要になってから」、介護入居型の有料老人ホームに入るもの。子供の世話にはなりたくない、世話をさせたくない、という考えが根底にあります。3つめは「元気なうちに将来の介護まで」見据えて住み替えるもの。まず、自立入居型の有料老人ホームに入り、介護が必要になったら介護居室に移る、というものです。4つめは最もお金がかかるコースで、「ライフスタイルに合わせて費用も有効に」使おうというものです。まず分譲型の高齢者マンションに入居し、介護が必要になったら有料老人ホームに移動するというものです。
元気なうちにリサーチ
ピンピンコロリ(PPK)が理想ですが、なかなかそうはいきません。ご自身の健康状態、経済力、家族状況などを考え、元気なうちに終の棲家をどうするか、いろいろリサーチして下さい。要介護状態になったら不可能です。いろいろな老人ホームを見学することをお勧めします。その際、看取りをどこまでしてくれるのか、スタッフ、入居者の表情はどうなのか、リサーチすべきことはたくさんありますが、終の棲家を決めるためには必要不可欠なことです。
(TVO 中川民雄)