私の「想い出の一曲」We are the Champ

 

私の「想い出の一曲」 We are the Champ “オーレー・オレオレオレー”

 この時期、高校生の各種スポーツ全国大会を連日テレビ観戦しています。締めくくりはサッカー。やはり青森山田の機動力、組織力は大津を圧倒していました。
試合を見ながら、「オレー、オレオレオレー」というJリーグの応援歌の話をしようと思い立ちました。

 2021年2月、ミヤンマーで暫く大人しくしていた国軍が再びクーデターを起こし、国民民主連盟(NLD)から政権を奪回しました。ただ以前、国軍が権力を掌握していた1990年代と違って、若者を中心に全土で反政府運動が巻き起こりました。国軍にとって激しい反政府運動は恐らく計算外のことだったろうと思います。
 時代が変わって人心も国情もすっかり変わっている事を読み違え自分たちの勝手な思いだけで起こしたクーデター、予想通りの手詰まり状態になっています。しかもコロナ禍の下での軍事行動、コロナ禍の中でのデモとあって再び三度、感染が拡大するのでは?との懸念は、現実となって今、現れているようで、かつてミヤンマーで取材した者として、心から心配しています。

 私が、ミヤンマーを訪れたのは1994年1月のことです。シンガポール特派員として赴任しましたがこの国は極めて平穏で大きな出来事は起こりそうもなく何かオリジナル企画を作らない限り、周辺諸国に行けません。そこで「海外日本人学校」という企画を作り、東南アジア各国の日本人学校を取材しようと思い立ったのです。幸いフジテレビ外信部も面白がってくれ、シリーズ第二弾としてミヤンマーのヤンゴン日本人学校を選びました。

 フジテレビ・バンコク支局がコーディネーター、ニュン・ティン氏を紹介してくれました。取材の申請はそのコーディネーターが出していたのですがヤンゴン空港に着くと役所に直行、会議室のような所で民俗衣装ロンジーを身に着けた、10人近い審査官(?)に取材の内容などを改めて聞かれました。物々しい雰囲気でしたが政治的な取材でもなく、すぐに許可が出ました。今にして思うとアウンサンスーチーさん関連取材ではない、という確認であったかもしれません。

 ヤンゴンンは他の東南アジア諸国に比べて道幅が広い印象で、良く言えば静かで落ち着いた、悪く言えば活気の乏しい雰囲気の街でした。ゴミが落ちていなくて清潔、ちょっとヨーロッパの街角といった印象です。町はずれ、かつての宗主国イギリス風の住宅街にヤンゴン日本人学校がありました。コロニアル風の三階建て、東南アジアではバンコクに次いで古い歴史を持っている、との事でした。
..ミャンマー人と日本人の両親を持つ小学校4年生の利発な女子児童が居ました。「将来国籍を選ぶ時は?」と聞くと暫く考えて「日本、かな?日本とミャンマーで役に立つ人になりたい」と答えてくれました。児童たちが市内の市場でミヤンマーの通貨“チャット”を使って買い物をしたり、「ミヤンマー日本人学校で勉強しています」という作文を朗読したり、校歌を歌ったりしているシーンを撮影、日本から派遣されている先生にインタビューしたあと、併設されている幼稚園でお遊戯を見せてもらった時の事でした。

 園児たちが“オーレー・オレオレオレー”と曲に合わせて踊っているのを見て「良い曲ですねぇ」と先生に言ったところ、「?」と怪訝な顔をされました。
「知らないんですか?これJリーグの応援歌、“We are the Champ”ですよ」と教えてくれました。

 特派員や駐在員の間で冗談半分に「長く駐在していると、浦島太郎状態」とか言っていたのですが正に、その通り。1993年にスタートしたJリーグの事を知ってはいたのですが、1991年赴任以来、日本の日常に触れていない間に、こんな洒落た歌まであったとは、“浦島太郎”を実感した出来事でした。

 余談ですが、当時のシンガポール(他の国も同様)で日本の情報はNHK国際放送、短波放送ラジオくらいしかないため、関西テレビ国際部からは年末の「紅白歌合戦」など時々、テレビ番組を収録して送ってくれていました。国際校に通っていた二人の息子にはバラエティ番組が届きました。ドリームズカムトゥルーの「アイズトゥーミー」を聴いたのも、送ってもらった「紅白」でのことでした。これまで日本の曲に無かったメロディー、と感心したのを覚えています。

 もうひと余談ですが、この日本人学校の校長は岐阜県から派遣されていました。当時関西テレビに私の日大芸術学部の後輩Uアナウンサーが居たのですがお話を伺ってビックリ、小学校時代の担任である事が判りました。滞在中、先生方の新年会に招かれるなど遠いヤンゴンの地で大いに盛り上がりました。

 軍部のクーデター以来、コロナとのダブルパンチのミヤンマー、日本人学校の先生方、子供たちはどうしているだろうと気になります。

出野徹之(KTV)

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