秋季懇親会 講演記録 岡田敬二氏

   講演 『宝塚歌劇団100年に思う』
    宝塚歌劇団・演出家   岡田 敬二 氏
     (宝塚文化創造館名誉館長)

 

岡田 敬二 氏

 今年の宝塚の公演は連日満員でして、特に9月の「エリザベート」は「ベルサイユのバラ」の記録を破る盛況ぶりでした。私はこの劇団に51年在籍しています。宝塚流にいいますと研究科51で鳳蘭、汀夏子は一期下になります。

 1914年、16名の少女たちで室内プールを改造した劇場で発足した宝塚歌劇団は今や年間300万人もの観客動員をはかります。音楽学校の生徒と合わせて473名を擁する大組織に成長いたしました。日本のレビュー劇団、大阪でいえばOSK大阪松竹歌劇団、東京は浅草国際劇場のSKDあるいは日劇ダンシングチームという有力のレビューが残念ながら消滅してしまった今もなぜ宝塚歌劇団が100年も人気を保っていられるのか。これには阪急電鉄という強力なスポンサーが背後に控えている事はもちろんですが、それ以上に創建した小林一三先生の精神が現在も脈々といって生きているからです。日本に健全な娯楽を、それも安い値段で提供したい!『清く・正しく・美しく』というモットーの元に歌劇団は作られました。宝塚の舞台には生々しいセックスシーンや血の飛び交う暴力シーンはありませんし、ドラッグのテーマもありません。少し甘いかもしれませんが一種ディズニーと同じ様な、お客様がご覧になった後に明るい気分で少しガッツをもらって帰っていただけるというのが100年続いた要因であります。

 この創建の理念を持ち続けられる現れは宝塚音楽学校にあるといえます。学校は予科と本科80名で構成されています。新入生は最初に「金剛石も磨かずば」という曲を歌わされます。この歌は明治天皇の皇太后様の御歌にメロディーをつけたものです。日々研鑽、努力して輝く人になって欲しい。同級生とは信頼を、上級生には敬愛を。常に厳しく舞台のための連帯感を持つように教育されているのです。私の知る限りこの歌を歌っているのは学習院初等科と宝塚音楽学校だけだと思います。

  私ども宝塚の演出家はまず小林先生の本を読まされるところから始まります。音楽学校の生徒とともに演出スタッフも小林精神を持ちながら今日までやって来ているのが100年もった理由でもあります。舞台のすべてに、「清く正しく美しく」が表現されているわけです。

《101年目からの宝塚》

宝塚大劇場

 実は宝塚歌劇団も101年目からの戦略は「宝塚発東南アジア」なんです。今や我々のレビューはフランスやアメリカのコピーから抜け出し世界的にも高い水準に達しているわけです。音楽、音響、照明、衣装そして舞台さらに演出に、日本人の持っている芸術的な感性の鋭さや総合芸術としてのレビューの成熟度が理解されていると私は思っています。『宝塚発東南アジア』すでに台湾で大成功していますし来年も行く予定です。現在韓国と中国とは残念ながら政治的にうまくない現状ですが民間の芸術や文化の面ではもっと仲良くできると思います。

レビューを通じてもっと日本の優しさや芸術的完成度を知ってもらいたく思っています。まずは宝塚歌劇団が東南アジアに進出することによって我々の役目が一つできるのではないでしょうか。

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