【落語】第69回例会「歳末吉例女流ウィーク」

 

「落語(上方芸能)を楽しむ会」

 第69回例会「歳末吉例女流ウィーク」

 

 年末の「落語(上方芸能)を楽しむ会」は、出演者がオール女性という繫昌亭恒例の「歳末吉例女流ウィーク」で笑い納め。だが、今回の女流ウィーク、12月12日月曜日はいつもと違う趣向が!なんと、2021年「NHK新人落語大賞」を女性で初めて受賞し、東京にも進出して人気急上昇中の若手落語家・桂二葉がこの日だけ出演し、しかも大抜擢でトリをつとめるというのだ。繫昌亭前支配人の恩田氏から聞いてこれは見逃せないと考え、例会をこの日に設定した次第である。桂二葉の人気を反映してか、この日は早々に全席完売!当日は会員19名が最前列~3列目の席に陣取り、かぶりつきの鑑賞と相成った。

 この日の出し物は、まず月亭八織の古典「延陽伯」に始まり、露の瑞「ん廻し」、ベテラン露の都の「セールスウーマン」と続く。おなじみ内海英華の女道楽では三味線の妙技に目を見張り、さらに桂ぽんぽ娘が「ナースコール」(作・三遊亭白鳥)、桂三扇が「じいちゃんホスト」(作・桂三枝)と相次いで創作落語を熱演して仲入りとなった。繫昌亭の昼席前半では主に若手の落語家が出演し、ともすれば眠気を催すこともあるのだが、この日は熱演が続き演目もバラエティに富んでいて、眠くなるヒマはまったくなかった。

 後半は、露の眞「忍法医者」、おなじみのベテラン露の都の「眼鏡屋盗人」と続き、松旭斎点蝶が切った紙を蝶に見立てて扇で見事に舞わせる「浮かれの蝶」を披露して満場の拍手。そしていよいよトリの桂二葉の登場である。演目は古典の「佐々木裁き」、彼女が2020年に初めてNHK新人落語大賞に参加した時に演じた演目だという。この話では、主人公の男の子が重要な役割を演じるのだが、子供の可愛さと賢さがあいまった魅力を真に迫った演技力で見事に演じ切り、劇場の満員の観客を魅了した。

 終演後は恩田氏の計らいで二葉さんに残っていただき、次の取材が控えていてあまり時間が取れない中ではあったが、いろいろとお話しをうかがうことができた。印象的だったのは、彼女は「女性落語家」というくくりではなく単に「落語家」としてみてほしい、とのこと。確かに、「女性」の枠を超えた「落語家」としての実力と自信に裏打ちされた言葉であり、今後のさらなる活躍を確信できるインタビューだった。なお、桂二葉はこの後、これも女性として初めて第17回「繁昌亭大賞」を受賞した。入門25年以内の落語家に贈られるこの賞だが、彼女は入門12目で最速の受賞である。「落語(上方芸能)を楽しむ会」としても、彼女の今後の活躍には目を離さず注目していきたい。

 公演後には、年末ということもあり食事会を設定した。劇場近くの中華料理店「大陸風」を予約していたのだが、世話人の予想を大きく超え、19人の参加者中なんと16人の方が食事会にも参加していただき、楽しい時間をともに過ごせたことを報告しておきたい。

(KTV)高井久雄

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