私の「想い出の一曲」 トルコ軍楽隊の行進曲(ジェッディン・デデン)

 

私の「想い出の一曲」 トルコ軍楽隊の行進曲(ジェッディン・デデン)

 あるキーワードとともに音楽や歌を思い出すという経験はありませんか?私には昔、NHKで放送された「阿修羅のごとく」というドラマとともに思い出す曲があります。エキゾチックで、不思議な曲でした。何やら笛のような楽器の音色で“ラーラーララ・ラーラーララ”というメロディだけが脳裏に残っていて、「トルコ軍楽隊の曲」というような字幕があったのを覚えています。ドラマは向田邦子の脚本、和田勉が初めて演出したホームドラマだそうです。初めて聴いたジャンルのテーマ曲はかつて訪れたトルコで和田自身が録音したのだそうです。

 一度は行ってみたいと思っていたトルコ旅行が実現したのは1997年、家内と二人、イスタンブールに向かいました。到着して先ず驚いたのが空港から市街へのタクシーのスピード。この後、国内各地を旅行するのにワンボックスカーに乗る事になるのですが、その早いこと、早い事。これでは必ず事故が起きるだろうなと思っていたら私たちの旅行直後、トゥズ湖という塩の湖付近で日本人観光客のバスが横転する事故がありました。

 イスタンブールではブルーモスクを見学したりボスポラス海峡に浮かぶ水上レストランでディナーを楽しんだり、アジアとヨーロッパの架け橋と言われる古都の魅力を味わいました。長く住んだ東南アジアとはまた違った文化、営みがあり、興味が尽きません。街中を散策している時、偶然にも、例の軍楽隊の演奏に出会いました。

 そこはドルマバフチエ宮殿の前。赤や黒のロングガウンに身を包み、飾りのついた帽子をかぶった軍楽隊が音楽を奏でながら優雅に行進してきます。立派な髭をはやした30数人の男たちが宮殿前で整列した後、ゆっくりと円を描きながらメフテル(軍楽)を演奏します。太鼓、チャルメラのようなラッパの音色、オスマントルコの時代から伝わるという軍楽を聞いていると、聞き覚えのある“ラーラ-ララ”が始まりました。

 「阿修羅のごとく」です。演奏とともに男たちの合唱が加わります。ドラマの記憶には無かったのですが、「ジェッディン・デデン」というポピュラーな曲だと後々知りました。楽隊の傍ではカセットテープを販売する露店が出ていて観光客相手に結構な商売をしていました。

 マイクロバスで観光名所、カッパドキアを訪れた時のことです。
昼食のレストランでアメリカ人のグループと一緒になり、中年の夫人が声をかけてきました。どうやら日本人と見て話したくて仕方がなかったようで、「シャル・ウィ・ダンスを観ましたか?」「もちろん」と私、「あの杉山はとても素晴らしい。良い映画で感動しました」

 一瞬、“杉山、Who?”と、戸惑いましたが、役所広司が演じた役の名前だと思いだしました。日本は勿論、アメリカでも200万人が観たという大ヒット作品。あの“微妙な恋”のニュアンスがアメリカ人のテイストにも理解されたのだなと嬉しくなりました。そしてこの夫人が「Sugiyama」と役名で覚えていた事にもちょっと驚きました。

 この「徒然」を書きながら、トルコの曲が結構多いのに気づきました。
憶えていますか?「イスタンブール」、1950年代に流行した男性コーラス、フォー・ラッズの曲。「イスタンブールは昔、コンスタンチノープルだった」と歌います。

 ♪ウースクダーラ・ギーデーリーケン♪と訳も解らずカタカナで覚えた“ウスクダラ”はアーサー・キットのヒット曲、トルコ語で歌いました。

そういえば日本でもありましたね。庄野真代、自身最大のヒット曲「飛んでイスタンブール」。“ルール”とか“シュール”とか語呂合わせの歌詞でちょっと洒落た曲でした。
何か歌いたくなる要素があるのでしょうか?トルコには。

出野 徹之(KTV)

 

TOP