定例懇話会 30周年特別企画 文楽人形遣い 桐竹勘十郎さん

Posted by on 2018年02月19日

 

 新年はじめての「定例懇話会」は、講師に文楽の人形遣い三世桐竹勘十郎さんをお迎えして話を伺いました。

 勘十郎さんは会場のガーデンシティクラブ大阪に、お弟子さんと「お園さん」(『艶容女舞衣』(人形))を伴って来られ、文楽の修業を始めた道頓堀朝日座の思い出、修業時代、当時の師匠たちの逸話など肩の凝らない面白いお話と、人形の秘密を明かしてくださいました。

朝日座で修業を始める

 勘十郎さんが修業を始めたのは、道頓堀界隈にまだ劇場がたくさんあった頃の朝日座。文楽専用劇場として作られたので、「床」が電動で壁に収納されるという日本中どこにもない仕掛けがあったという。

 子供のころ見た『曽根崎心中』の道行きでは、太夫、三味線が8人、10人と並んで合奏し、お初と徳兵衛が心中する場面では、語りはなく三味線だけ、その静かな三味線に乗って電動の床が壁の中に入って行く、これが衝撃的で好きだったという。

人形遣いの極意

 「人形を遣うときはその役の気持になれ、そうすると役らしい動きができる」と教えられました。といって泥棒の格好をしたシンプルな棒人形を取り出し、「もちろん、泥棒をしたことはありませんが」と断りながら辺りを伺う仕草などをすると、まるで本物の泥棒のように見える。ただの棒人形も名人が操ると、まるで生きているように見えるから不思議である。人形遣いは、文楽の人形はもちろん、どんな人形にも命を吹き込むことができる。名人芸に感服した。

森羅万象(世界)を語るのが太夫

 文楽の人形遣いは一言もしゃべらない。太夫と三味線が語る浄瑠璃に合うように芝居をするだけ、太夫が大きく動ける時間と空間を作ってくれなければ、人形はいい芝居ができない。人形の代わりにしゃべるのが太夫ではなく、森羅万象(世界)を語るのが太夫、だから重要なのだという。

文楽の世界に生きる師匠

 芸の修業は厳しい。足遣いをしていて主遣い(師匠)から客席に聞こえるほど叱咤されたり、人形の襟付けをしていて出番になり、舞台を終えて楽屋に戻ると、どこが悪かったのかバラバラにされていたりと、今では考えられない厳しさだったそうだ。

 当時の師匠たちは、文楽の世界にどっぷりつかって生きている人も多く、弟子が、車で東京公演へ行くという話を聞いて「大井川はどうしまんねん」と真顔で聞いたり、「交通費を預かってきました」と差し出すと、けげんな顔をして「交通費?」と聞き返す、さらに「東京行の…」というと、「ああ、路銀か」と納得したり、浮世離れした人もいたという。

人形の秘密

 最後に「お園さん」(『艶容女舞衣』)の登場。足遣いと二人で「お園さん」を遣って見せてくれたが、客席からは見えない足遣いの窮屈な後傾姿勢に、修業は生半可な覚悟ではできないと思った。

 さらに、首(かしら)の動くメカニズム、目や眉、顎を使った表情の出し方、より本物らしく見せる演技の仕方など実演し、主遣いが握る「胴串」、左遣いが操る「差金」など人形の秘密を惜しげもなく明かしていただいた。

 桐竹勘十郎さんは、国立文楽劇場の4月公演(4/7~4/30)第1部『本朝廿四孝』で勘助の母、『義経千本桜』で狐忠信を遣われる。今回の話から得た新たな見どころを心にとめて文楽を楽しみたいと思う。

(KTV山口志郎)